クリムト、視点aの創出(豊田市美術館に行ってきた!)

 

 「クリムト展」が行なわれてる、豊田市美術館に行きました。クリムト、見ごたえありましたね。たくさんの絵が見れて良かったです。特に「ベートーヴェン・フリーズ」もありましたし、充分満足な展示でした。

 

 そこでの感想・考えたことを書こうと思います。題して「クリムト、視点aの創出」

 

ゴッホゴーギャンらの後期印象派からマチスなどのフォービズム(野獣派)にいたる原色を用いた鮮烈な筆致も、遠近法(写実主義)の否定・乗り越えと捉えられるだろうと思います。だけど、それとはまた異なった経路で、奥行きを発見する仕方をクリムトは見出したように思いました。

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ゴーギャン


 だけど、それとはまた異なった経路で、写実の克服を発見する仕方をクリムトは見出したように思いました。 

 

 「女性の三時代」を前にしたとき、それが見事に表現されていると強く感じました。

 これは抱かれた幼児、そして母親、老いさらばえた老女の三人をして、女性の三つの年代の姿を描きだした作品です。奥の茶色の背景には細かな銀がちりばめられ(写真では白く見えますが)、雨のようにも見え、一刻一刻移り変わる時の流れを感じさせます。その上に女性たちがいるのですが、三人を包み込む背景は、全体の背景である茶色の上に浮き上がる感じで、花柄や丸をモチーフにした独特のものになっています。

 この、三人を包み込み、銀の雨降る背景から浮き出してる(=隔絶している)、丸や花柄の繰り返しのオブジェ(物体)的背景こそ、クリムトの創出した視点aなのではないでしょうか。そこでは雨も降らず、現実的な生活の些末な一切も起こらず必要のない観念としての地平と言えるでしょう。

 

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女性の三時代

 すなわち、クリムトは、

「東洋的な模様(着物の模様や唐草、市松模様など)をオブジェ(物体)として背景に用いる」ことによって「視点aを創出している」と言えるのではないでしょうか。

 

 また、もうひとつそれに関連して素晴らしい展示がありました。

 ウィーン大学天井画『医学』『哲学』『法学』の写真(原画はナチスに焼かれてしまったため焼失)で、これもほんとにどれも素晴らしいのですが、特に『法学』ですね。

 上方にいる女の人が「真実」「正義」「法」を表していて、蛸に絡まれる男を囲んでいるのは「刑の執行人」です。

 

 

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「法学」


 ここでも曲線や唐草っぽくもある蔦のようなモチーフのオブジェを背景に<視点a>としての「刑の執行人」が登場しています。この執行人の存在も、前にいる蛸・男とずっと後方にいる「真実」「正義」「法」の女の構図に、半ば割り込むような形になっており、単にすっきりと遠近法的に見ることを妨げているのです。

 私はこの「刑の執行人」が特に好きですね。この三人の女が定まらないうつろな視線を投げかけていて、それにこの場合、この三人の執行人すらオブジェのようにすら見えてします。圧倒的な存在感を持った物体、という点ではトルソーの存在感にも通ずるところがあるのかもしれませんね。

 

 豊田市美術館いいところでした。またゆっくり見に行きたいですね。クリムト展、上に出した二枚以上にたくさんおもしろい絵もあり、充実の展示でしたのでおすすめです。

 

PS

豊田市美術館のロゴを見て、まずモンドリアンを思いました。

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モンドリアン

参考にした記事

https://blog.goo.ne.jp/dolci_ekou/e/803737c4f70083c7ddb2c20b96716912

http://blog.livedoor.jp/removeremove/archives/51468613.html

https://www.nicovideo.jp/watch/so35438321