大阪文学フリマ 冊子紹介「Lollypop Rainbow」

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今回の大阪文フリ(4/14)では、「だれにもわからない。」というサークル(ブース A-13)でLollypop Rainbowという冊子を頒布します。(価格は500円)

テーマは虹。各作者に色を設け、それをモチーフにキーワードを設定し、物語をつくってもらいました。それぞれのもつ色のグラデーションを感じれるような冊子を目指しました。平均三万字の充実した内容になっていて、ライトなものあり、ヘビーなものあり、ポップなものあり、つらみなものありと、企画を立てた時には思いもよらなかったような、魅力的な作品集になりました。特徴の強い作者たちが織りなす物語の光錯を、是非それぞれの読者の手で感じ、他のどこにもない意味を受け取って欲しいと思います。ある意味では明白で、ある意味では何処にも見つからなかったものがそこにあることを信じて。

また、可愛い表紙絵はりっつさん(@teastea_a)が描いてくれました!

 

それでは以下、冊子のこまかな紹介です。(紹介:高木と四流色)

 

 

☆Lollypop Rainbow

色彩溢れる七編の小説集

虹の七色を用いて、それぞれの描く生が、文面の上で星のようにまたたいては跳ね、死の欲動と眼差しを交わす。

 

1「炉床の底より月の涙が」高木秋穂 <赤・心臓> p7-27

 話の舞台となるのは、洒落た西洋風の一年中灰の降る街だった。そこには、「いくらか大空に近い坂の上なら、世界がすこしずつ砕けていって、それぞれに散っていくような、どこか音楽的」な風景が広がっている。その街では最近殺人が、それも夢の中での殺人が横行しているという。その殺人の秘密とは。そして街を動かしているものとは。無機質さと淡さが混ざったようなSF風味な短編です。(夜空)

 

2「卵を落とす」四流色夜空(@yorui_yozora)<橙・卵> p29-64

 北見朽は小学校時代に軽いいじめを目撃し、それ以来すべてがどうでもよくなってしまった。高校まであがってもその視界は晴れることはなかったが、二年に上がったある時、その前に浦河咲が現れ、北見の心に変化が生じ始める。しかし一方で、浦河浦河で必死に逃げようと生きていたのだ。ふたりは身を寄せ合うように生きていくが、それぞれの問題はやがて目を逸らせるものではなくなっていく――。

 明るく振る舞うことを諦めた人間と、諦めて明るく振る舞う人間の交流を描いた現代に落ちるひとつの話。

 

3「檸檬奇譚」葛西心中 <黄・檸檬> p65-107

 ある昼下がり、放り出された檸檬は目前の女性のフードへ飛び込んだ。あるはずもない、不自然な段差に躓いて――それが彷徨の始まりだった。購入者を離れ、檸檬は様々な出会いを果たしていく。対照的な性格の姉妹――抜け目の無い烏――そして犬のレオン。

 巡りつつも、彼らの日常は緩やかに続いていく。一つの檸檬を中心にして、その周囲を星のように駆ける人々の、おだやかでささやかな物語。(高木)

 

4「デッドエンドフラッシュバック」矢窪秋 <緑・エメラルド> p109-184

 ヴェネチアを舞台に、現実と虚構の問題を中心化して浮き彫りにさせ、それをラノベ調で駆け抜ける快作。主人公の単純すぎるほど単純なエロ思考と妹佐夜と街で会ったシーリカによる百合要素がストーリーを彩る中、どうしようもない最悪の運命が幾度も重くのしかかってくる。生きるとは何か、現実とは一体何なのか。そんな彼らが果たして最後に迎えるのは、デッドエンドかそれとも――。(夜空)

 

5「クラウベン・エッフェの家」砕閣 <藍・家> p185-209

「クラウベン・エッフェは、何処にでもいるやうな凡庸な男であらう」――平易な生活の中で、クラウベンはふと絶望を覚えた。絶望には色がある。赤くはないが、かといって青でもない。少しくすんだ藍色をしている。「茹でられて赤に染まる死の引力と、白く泡吹く生の重力との間で横歩きを繰り返していた。」のだという。

 邦訳の体を擁して、その上で創作であることを提示し、構造を破壊する構造を生み出す。どことなく「嘔吐」を彷彿とさせた自動生成のテキストを、あたかも建築のように組み立てていく実験作。(高木)

 

6「人魚を殺した男」結月采 <青・海> p211-240

人間の少年ヴィリーと人魚ルルの、自らの規定される種族という壁に阻まれながらも、その向こう側へと手を伸ばすファンタジーストーリー。青い洞窟の中で、ささやかに交わされるふたりの言葉は、仄かに切なさを伴い、ごつごつした岩に残響を投げる。ルルの花緑青の瞳と、ヴィリーの黄金色のそれが交錯する先は、恵まれた大地かあるいは……。爽やかな読後感を呼び起こす、繊細ながらも息使いの伝わってくる短編です。(夜空)

 

7「此の糸をたどって」斉藤慶次(@shikaiu) <紫・若紫> p241-287

 小林秀雄の引用から始まり、アフォリズムや、視点の入れ替わり、幾作品ものパロディ、独特な構成に苦心が見られ、それらが一体となり混然となって強い説得力を醸し出している。

 新任の国語教師であり、よっぽどの神経症患者である刑部憑介に、明晰な頭脳を持ち、そのことを自覚してもいる蠱惑的少女であり、滑らかな体躯を有した榊紫はある時、こう尋ねる。

「私、先生に誘拐されたいと思うの。いけないかしら。」

 かくして「高等にして通俗、論理学的にして宇宙論的な、反復的で教訓的な学校物語」が幕を開ける――。

 最後を飾るにふさわしい重量感を伴った作品になっていて、その厚みにも関わらず、文体は心地よくて読みやすいのがすごい。そうして辿り着くラストは圧巻であり、読後に手に残った欠片が愛おしくなります。たとえそれがもう形を為していないとしても。(夜空)

 

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サークル名「だれにもわからない。」

冊子名「Lollypop Rainbow」

価格500円

大阪文フリ四月十四日発売

わぁい!よろしくです!

 

 

大阪まで来れない!という方は下記のアドレスに連絡をいただければ、郵送でも受け付けたいと思います。(その際は一冊500円+郵送料といった形になります)

連絡先:

→完売しました。

 

また葛西心中氏による解説も更新されております。

http://d.hatena.ne.jp/kslvc/20130326/1364318102

 

第十六回大阪文学フリマ

http://bunfree.net/?16th_circlecatalog